院長のブログ

2025.02.16

シミと肝斑

ターンオーバーとメラニン

皮膚の構造とターンオーバー

からだの表面は『皮膚』と『皮下脂肪』で覆われていて、その下に『筋肉』や『骨格』、『臓器』があります。

皮膚は『表皮』と『真皮』とで構成されます。
皮膚のいちばん上、つまりからだの表面は、『角質層』で覆われています。

角質層は、体内に異物・毒物などが入らないように、また、体内から水分が蒸発して抜けていかないように、バリアの役割を果たしています。

表皮の大部分は、ケラチノサイトと呼ばれる細胞でできています。

  1. 基底細胞が分裂すると、ケラチノサイトが生まれます。
  2. 更に新しく生まれたケラチノサイトによって表層に追いやられながら、細胞内に脂質を蓄え、体表のバリア機能を担えるようになります。
  3. ケラチノサイトは表面に近づくにつれ、細胞死を迎えて角質細胞となり、角質層として強固なバリア機能を形成します。
  4. 古い角質はいずれ垢になって、剥がれていきます。

この、ケラチノサイトが基底層で生まれて角質になって剥がれていくという一連の流れが、ターンオーバーと呼ばれるものす。

ターンオーバーの周期

ターンオーバーの周期、すなわちケラチノサイトが生まれてから垢として剥がれ落ちるまでにかかる時間は、若い健康な肌であれば28日くらいです。

年齢が進むにつれ、細胞分裂が減ることでターンオーバーの周期は伸びていき、40代で40~50日、60代以降では70~100日(正常の2~3倍)にもなると言われています。

細胞分裂が減少する原因として、細胞自体の老化に伴う機能低下や、紫外線ダメージの蓄積、ホルモンバランスの変化、血流の減少などが関わっています。

ターンオーバーが延長することで、

  1. メラニンの排出が遅れてシミの発生・悪化が起こります。
  2. 古い角質が肌表面に残ることで、くすみゴワつきキメの乱れが生じます。
  3. 肌のバリア機能が低下することで水分の保持力が下がり、乾燥しやすくなります。

メラニンの役割

表皮のいちばん下、基底層にいるメラノサイトは、メラニンと呼ばれる黒い粒子を作ります。

メラノサイトは、作ったメラニンをケラチノサイトに渡します。
メラニンは細胞核の表層に並び、核内の遺伝子を紫外線から守る、『日傘』の役割を果たします。

ケラチノサイトが取り込んだメラニンは、時間とともに分解され、同時にターンオーバーにより排出されます。
ですので、通常ならシミとして目立ってくることはありません。


シミについて

シミの原因は?

シミ(老人性色素斑)とは、メラニンが皮膚に過剰に溜まっている状態です。

ケラチノサイトに紫外線によるダメージが蓄積すると、遺伝子に異常を来し、増殖した異常なケラチノサイトが、メラノサイトに対してメラニン生成のシグナルを送り続けてしまいます。

これが、シミ発生の原因です。

更に、メラノサイト自身と真皮浅層の線維芽細胞にも異常が発生することで、メラニンの過剰な生成が加速されます。

加齢などに伴うお肌のターンオーバーの乱れ・遅れも、メラニン蓄積の大きな要因です。

そばかすって何?

シミに似たものに、そばかす(雀卵斑)があります。

頬上部から鼻にかけて、茶色の細かい斑点が生じます。
5〜6歳くらいからでき始めることが多いです。
遺伝的な要因が大きい疾患で、そばかすの部分ではメラノサイトが遺伝子に異常を来たしており、メラニンが作られやすくなっています。

そばかすもシミと同じ様に治療することができます。

シミの治療は?

シミの治療は、IPLレーザーのいずれかを選択します。

<IPL>
メラニンがIPLの光を吸収して発熱することで、メラニンが溜まっている周囲の細胞がダメージを受け、ターンオーバーが促進されることで、シミが改善されます。

<レーザー>
メラニンそのものを粉砕します。
粉砕されたメラニンはターンオーバーにより排出され、シミが改善されます。

光の性質の違い:波長とパルス幅

<波長>
光は波長によって、どの物質に吸収されやすいか(どの物質に影響を与えやすいか)、どれくらい深くまで到達できるかが変わってきます。

IPLは、400〜1200nmくらいの、様々な波長の光を照射します。
様々な波長が含まれることで、メラニンの黒や赤血球の赤など、様々な物質と反応し、シミだけでなく赤みや肌質も改善させる効果があります。

レーザーは、単一の波長のみの光を照射します。
治療したいターゲットに適した光の波長を選択することで、ターゲットには強力な反応を引き起こし、ターゲット以外の組織はなるべく反応させない、ということを目的に使用されます。

<パルス幅>
パルス幅は、光を照射するのにどれくらい時間をかけるかを表すものです。
同じエネルギーを照射するにしても、長い時間をかければボンヤリと暖かくなるような反応ですが、極々短い時間で照射すれば、爆発的な熱上昇が生じます。

IPLはパルス幅が比較的長いので、レーザーに比べて反応がマイルドです。
ダウンタイムが少ない反面、効果を上げるには回数が必要です。

レーザーは施術1回の効果が高い分、カサブタや色素沈着などのリスクを伴います。

IPLとレーザーの比較

IPL レーザー
波長 400〜1200nm 単一波長
(532, 694, 1064nmなど) 
パルス幅 長い(マイクロ秒) 短い(ピコ秒〜ナノ秒)
治療範囲 お顔全体 ピンポイント
痛み 多少の痛み 少ない
(広範囲だと痛い)
回数 複数回必要 1回で高い効果
ダウンタイム なし~細かいかさぶた かさぶた
色素沈着
術後のケア 特になし テーピング必須
シミ以外への効果 赤みの改善
肌質の改善
なし
シミの再発 する する

IPLとレーザーの使い分け

シミがたくさんある場合や、施術後のテーピングは避けたい場合には、IPLがおすすめです。

IPLによる1回の治療効果はレーザーに劣りますが、回数を重ねることで、お顔全体の色ムラをなくし、トーンアップを実現します。
更にIPLでは、発熱により線維芽細胞が刺激され細胞外マトリックス(ECM)が再構築されることで、肌質(ハリ・ツヤ・シワ等)の改善もご実感いただけます。

ピンポイントに目立つシミや、IPLでの照射範囲外(まぶた、目のキワなど)のシミ、IPLで改善しない頑固なシミなどには、レーザーのスポット照射がおすすめです。

※レーザーのスポット照射を行った場合、2週間のテーピングが必要になります。

シミ治療では、必ずしもレーザーが全面的に優れている、というものではありません。

肌の状態と、お客様のご希望にあわせて、適切な治療法をご提案致します。

シミ治療の塗り薬①:ハイドロキノン

シミを改善させる塗り薬として、ハイドロキノンがあります。

ハイドロキノンは、次の3つの働きによって、シミ・肝班を軽減させます。

  1. チロシンをメラニンに変化させる『チロシナーゼ』という酵素の働きをブロックして、メラニンの生成を減らします。

  2. 酸化によって黒くなったメラニンを還元することで、メラニンの色を薄くします。

  3. メラノサイトの活動性を弱めます。

ハイドロキノン単独での治療は、改善が見られるまで長期間を要するもので、ある程度のところで効果が頭打ちになる可能性もあります。

シミに対しては基本的にIPL/レーザーでの治療をおすすめしますが、IPL/レーザーを受けられない(受けたくない)という方には、ハイドロキノン単独での治療も選択肢となり得ます。

シミ治療の塗り薬②:グリコール酸

グリコール酸はピーリング剤の1つです。

加齢や肌荒れなどによりターンオーバーが乱れると、古い角質が積み重なって、キメが乱れたり、メラニンが排出されにくくなりシミ・くすみの原因となります。
グリコール酸は角質層の結合を緩めることで、ターンオーバーを促進・正常化し、肌が柔らかくなるとともに、シミ・くすみを改善に導きます。

更にグリコール酸は、真皮の線維芽細胞にも作用します。
コラーゲンの合成が促進され、お肌のハリの改善が期待できます。

当院で取り扱う『WiQo フェイスフルイド』は、8%グリコール酸を含む、ご自宅でご利用いただけるマイルドなピーリング美容液です。
1日1回、日常のケアにグリコール酸をご利用いただくことで、肌質の改善とシミの改善・予防の効果が得られます。

シミの再発と予防

上の表にも記載したように、IPL、レーザーどちらで治療したとしても、シミは基本的に再発します。
それは、シミの原因である、遺伝子に異常をきたしたメラノサイトや線維芽細胞は、シミ治療では無くならないからです。

シミの再発を防ぐには、紫外線対策内服薬が必要不可欠です。

紫外線対策(日焼け止め)

シミの予防に最も重要なのが、紫外線対策です。

お肌に紫外線が当たると、肌細胞は紫外線から自分の身を守ろうと、メラニンを作る指令を出します。
肌細胞がプラスミンという物質をつくり、プラスミンがメラノサイトを活性化することで、たくさんのメラニンが生成されます。

日焼け止めを使うことで、お肌の細胞に紫外線が届かなくなりますので、メラニンを作らせる指令も減ることになります。

なお紫外線は、美肌・美白の観点からは、害悪でしかありません。将来的な皮膚癌発生のリスクにもなり得ます。
シミ治療を受ける受けないに関わらず、1年を通して日焼け止めを使用し、紫外線対策をしていただくことを、強くおすすめします。

※注意※
日焼け止めは、朝1回塗れば安心というわけでは全くありません。
SPFが大きいほど長時間紫外線を防いでくれる効果は期待できますが、どうしても摩擦や汗などで落ちてしまいます。
確実に紫外線を防ぐためには、日焼け止めは2~3時間に1回塗り直すことを、心がけてください。

SPF:Sun Protection Factor
何も塗らない場合に比べ、紫外線(UV-B)によって炎症が発生するのを何分防いでくれるか
SPF 1で約20分 → SPF 50で約16時間40分

内服薬

シミ予防の内服薬として、次の3種類をあわせてご利用いただくことをおすすめします。

メラニンを作る指令をブロックする、メラニンを作る酵素をブロックする、ターンオーバーを早めるなど、それぞれの薬剤が異なるメカニズムでシミの発生予防と改善にはたらきます。

当院では現在取り扱いがございませんが、ハイチオール(L-システイン)やタチオン(グルタチオン)などの内服薬も、シミの予防に効果的です。

内服薬だけでもシミの改善が得られることは多いですが、変化が目に見えて現れるには数ヶ月から半年程度は必要です。
また、内服薬だけでの治療では、ある程度改善したところで、効果が頭打ちになることも多いです。
早期のシミ改善をご希望でしたら、IPL、レーザー治療をあわせてご検討ください。


肝斑について

肝斑の原因は?

普通のシミは境界がはっきりしているのに対して、肝斑は境界がぼんやりとした不定形です。
頬の高まりの部分から外側にかけて、左右対称に現れることが多く、鼻の下や口周りにも見られることがあります。

毛細血管の拡張を伴い、赤みを帯びていることも多いです。

肝斑の発症には、女性ホルモン(妊娠、ピル、ホルモン補充療法など)や紫外線、こするような不適切なスキンケアのほか、遺伝性の要因が関与します。

慢性的な炎症とメラノサイトの活性化により、メラノサイトは樹状突起を伸ばし、メラニンをたくさん作るようになります。
真皮の毛細血管は増殖して太くなり、真皮からはメラノサイトを活性化する物質が増加します。

肝斑の治療は?

肝斑治療の原則は次の3つです。

①適切なスキンケア
②紫外線対策
③内服薬

より積極的に早期に肝斑を改善させたい場合には、

④レーザートーニング
⑤外用薬
⑥エレクトロポレーション
⑦プルリアル・デンシファイ

の選択肢があります。

①適切なスキンケア

肝斑にとって、摩擦は大敵です。
肝斑の部分はバリア機能が低下しており、多少の摩擦でも刺激となり、炎症を引き起こして肝斑が悪化してしまいます。

洗顔では、手は肌に触れないように、泡で優しく洗うようにします。

顔をタオルで拭く際には、こすらず上から押さえて水気をとります。

化粧水や乳液などを使用する際も、とにかくこすらないように、手にとって押さえつけるようにしてなじませます。

なお肝斑の部分では、バリア機能の低下により水分が蒸発しやすい状態となります。
乾燥はさらなるバリア機能の低下をもたらします。
朝晩しっかりと保湿を心がけてください。

②紫外線対策

紫外線はシミだけでなく肝斑も悪化させます。

お肌に紫外線が当たると、肌細胞は紫外線から自分の身を守ろうと、メラニンを作る指令を出します。
肌細胞がプラスミンという物質をつくり、プラスミンがメラノサイトを活性化することで、たくさんのメラニンが生成されます。

日焼け止めを使うことで、お肌の細胞に紫外線が届きにくくなりますので、メラニンを作らせる指令も減ることになります。

③内服薬

肝斑の治療と再発予防においても、シミの治療・予防と同様に、次の3種類をあわせてご利用いただくことをおすすめします。

肝斑の発生部位では、慢性的な炎症反応が起きています。
上の3剤は、メラニンの生成を抑えたり、ターンオーバーを早めるほか、炎症を抑える効果もあります。

肝斑に対する内服治療は、シミの内服治療よりも、短期間で高い効果が見られることもあります。
ただ内服薬だけでの治療では、ある程度改善したところで、効果が頭打ちになることも多いです。

内服薬は基本的にずっと続けていくのが望ましいですが、改善の状態を見ながら、お薬を減量したり、休薬することも可能です。

④レーザートーニング

より積極的な肝斑の改善と、再発しにくい肌づくりをお望みでしたら、あわせてレーザートーニングをご検討ください。

レーザートーニングは、低出力のQスイッチYAGレーザーを照射する肝斑治療です。
トーニングにより肌に蓄積したメラニンが排出されるとともに、メラノサイトの活動性が下がることでメラニンの生成が少なくなり、肝斑が改善されていきます。

レーザートーニングを行う場合でも、内服薬をあわせて使用することが原則となります。

レーザートーニングで肝班を改善させるには、5~10回程度は回数を重ねる必要があります。
内服薬は飲みたくない、あるいは持病などにより飲めないといった場合、トーニングはより多く回数が必要になる可能性が高くなります。

⑤外用薬

肝班を改善させる塗り薬として、ハイドロキノンやシステアミンがあります。
(当院ではシステアミンの取り扱いはありません)

ハイドロキノンは、次の3つの働きによって、シミ・肝班を軽減させます。

  1. チロシンをメラニンに変化させる『チロシナーゼ』という酵素の働きをブロックして、メラニンの生成を減らします。
  2. 酸化によって黒くなったメラニンを還元することで、メラニンの色を薄くします。
  3. メラノサイトの活動性を弱めます。

ハイドロキノンは、内服薬、レーザー治療とあわせてご利用いただくことで、シミ・肝班の改善効果をより高めます。
内服薬は使いたくない、というお客様にもおすすめです。

⑤エレクトロポレーション

エレクトロポレーションは、電気の作用で細胞に一時的に微小な穴をあけることで、有効成分を肌の深部まで導入する施術です。

肌に負担がかかりませんので、肝班のある肌に対しても、安心して施術を受けていただけます。
肝斑に対しては、炎症を抑える作用のあるビタミンCやトラネキサム酸を導入するのがおすすめです。

⑦プルリアル・デンシファイ

プルリアル・デンシファイは、ポリヌクレオチド(PN)を主成分とする薬剤で、肌に注射して使用します。

ポリヌクレオチドが注射されると、肝班の部分で見られるような慢性的な炎症が沈静化されるとともに、肌が強化されてバリア機能が高まることで、肝班を改善に導き、肝班が発生しにくい肌へと導きます。

注射の痛みを伴いますので、肝班の治療としてまず最初におすすめするものではありませんが、他の治療で効果が不十分だった際には、ぜひご検討ください。

肝斑の再発と予防

肝斑は再発しやすいものです。

肝斑の発生部位では、表皮が正常皮膚よりも薄くなり、バリア機能が弱っていたり、『光線性弾性線維症』といって、異常な弾性線維(エラスチン)が蓄積していることなども、肝斑の発生に関わっているとされています。
肝斑治療により色みが薄くなっても、根本的な原因が残っていれば、肝斑は再発してしまいます。

いったん良くなった肝斑を再発させないためにも、肝斑治療の項で述べた①適切なスキンケア、②紫外線対策、③内服薬 は、そのまま続けていただくことが原則となります。

更に根本的な原因を是正するためには、真皮の細胞外マトリックスの再構築を促す、スペクトラピールがおすすめです。

スペクトラピール

スペクトラピールは、1064nmのロングパルスYAGレーザーを、お顔全体に照射していく施術です。

  1. レーザー照射で生じる熱の作用で表皮のターンオーバーが促進され、バリア機能が正常化されます。
  2. 肝斑部分では真皮毛細血管の増加・拡張が起こっていますが、スペクトラピールの1064nmの光はヘモグロビンに作用し、異常な毛細血管を消退させます。
  3. ECM(細胞外マトリックス)が再構築されることで、真皮からのメラノサイトに対する異常なシグナルが減少します。

これらのメカニズムにより、肝班が再発しにくい肌が作られます。

トーニングによって肝斑がある程度落ち着いたあとは、トーニングとスペクトラピールを交互に行ったり、スペクトラピールだけを繰り返すことも可能です。

肝斑の再発予防だけでなく、美肌にも役立ちますので、ぜひご検討ください。


最後に

シミと肝班の発生のメカニズムと、その治療、予防について述べました。

シミや肝斑は、加齢や紫外線、ホルモンバランスの乱れなど、さまざまな要因が複雑に関わって発生します。
原因を理解し、正しい知識に基づくスキンケアで、予防に努めることが大切です。

市販のサプリや塗り薬では、シミや肝班に対する治療効果は限定的です。
シミ・肝班を根本的に治したいのでしたら、医療機関での治療をぜひご検討ください。
年齢を感じさせない、明るく健やかな肌を目指しましょう。

お客様がご自身の肌を心から好きになれますように。当院はそのお手伝いをいたします。

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